3. 事例・指標について
これまで取り組んでやめてしまった取り組み
「バズる」ことを狙ってはいない。上っ面ではダメ。
阿:これまで取り組んできてやめてしまった取り組みや失敗事例を、率直にお聞きしたいという質問もいただいているので、差し支えない範囲でぜひお聞かせください。
藤:ネットでバズるとどうしても嬉しくなっちゃうじゃないですか。でも、私は最初からこれを狙っていません。
なぜかというと、過去にTBS日曜劇場「JINー仁」というテレビドラマにヤマサが出た時に、実はすごくバズったことがありました。
しかし、その後POSデータをずっと見てたんですが、これが全然増えてないんですね(笑)上っ面のやつはダメだと思いました。
デジタルは手をかけてコントロールする必要がある
もうひとつ、上っ面で失敗したのはmixiアプリです。
コミュニティサイトを作ったら上手くいったんですが、投稿者への全返信にすごく手間もかかっていました。
そこで、mixiユーザーさんだったらお互いにコミュニケーションしてくれるんじゃないか、ということでmixiアプリの「I LOVE レシピ」というコンテンツを作ったんですけど、これが全然盛り上がらないんですよ。それで結局、手をかけてちゃんとコントロールする「中の人」がちゃんといなきゃダメだよねとなりました。
なので、うちは全部コメント返信してます。デジタル系は手抜きするとダメなので。それでますますファンベースを手をかけてやる方にスイッチしてるかなというのはあります。

阿:mixiアプリでの一番の失敗理由は、ユーザーに自律的にコミュニケーションしてもらうのが難しかったということですか?
藤:そうです。全然ならないんですよ。
阿:そうですよね。SnapDishだと料理というテーマが最初から決まっていて、もともとユーザーさん達がコミュニケーションをしている場なので、その後自然にファンに育ってくれるんですが、それを1から作るのはとても大変ですよね。
藤:そうそう。SnapDishさんでも、すでに「おいしいしょうゆ研究部」で一緒になった人たち同士で横のつながりができていたりとか。
Facebookもメーカーと友達になるので、メーカーと消費者という縦のつながりしかできず、消費者同士の横のつながりがないんですよ。
SnapDishさんみたいにユーザー同士の横のつながりがあった方が盛り上がるので、Facebookも今はやってないです。
簡単には自分がいいなと思ったことが広がらない
阿:ちなみに松倉さんは、家庭用の商品企画に入られてからは経験があまりないとおっしゃってましたが、失敗したことはありますか?
松:もう失敗だらけで、家庭用・市販用の商品はこれが一発目で、社内ではビギナーズラックってずっと言われています(笑)
業務用の方ではいろんな商品を経験したんですけど、ほとんど失敗の連続ですね。
そんな簡単に自分がいいなと思ったものが広がらないんだなっていうのはよくわかって、いま経験を積んでいるところです。
ファンが売上に与える影響の測り方
商品開発者の悩みは、必要条件と十分条件の切り分け。SNSは傾聴する。
阿:多かった質問で、ファンが売上に与える影響についてはどのようにお考えでしょうか?
藤:毎月の会議で数値の振り返りはしていますが、KPIを設定してこうしようっていうのはやってないですね。
なんでかというと、やっていれば実感としてわかるからです。さっき松倉からも少し触れていましたが、商品開発担当者の悩みは必要条件と十分条件の切り分けなんですよ。いろんなお客さんの意見はほとんどが十分条件で、あればそりゃいいよね、みたいな。
それを自分の判断基準でこれは必要条件だと思ったものだけを取り入れていくことが、実は商品開発者の資質だと僕は思ってます。そういった意味ではSNSはKPIというより傾聴することが大事な場だと思います。
コロナ禍における生活者とのかかわり方、施策の在り方の変化
つゆは 買うまでのインターバルが長い。売り場でもう一度見てもらう。
藤:コロナ禍で、スーパーさんはチラシをやらなくなりました。
さとなおさんのセミナーでもお聞きした通り、今は情報の粒度が細かくなっていて、特にお醤油とかつゆのように買うインターバルが長い製品ではテレビCMをやって、いいなと思ってもらっても、家にあると買いません。CMを見た瞬間は、今度この醤油がなくなったら買おう、と思っても、いざ買う時には忘れちゃってるんですよ。
それがあるので、私たちはCMやファンベースもやりながら、店頭・売り場でもう1回つゆを見てもらうという施策もやっています。具体的にいうと最近はキャラクターが好きです(笑)売り場に近いところでは効果が高いと思っています。
阿:キャラクター施策は、短期的にもその後にもつながっているとおっしゃってましたよね。
藤:そうですね。特に調味料のコマーシャルは昔から興味を持たれないというか、日本人にとって空気みたいなカテゴリーなんですね。つゆもそうなりつつあって、特に考えないで買っちゃってるんですね。
ヤマサは2番手で棚の占拠率が低いから、お客さまはどうしてもたくさん並んでいるトップメーカーの商品に行っちゃうんですけど、キャラクターがついてると売り場で目に留まるわけですね。そういう効果もあるんじゃないかなと私は思っております。
———————————————————————
1.ファンづくりの考え方について
2.具体的な施策内容について
3.事例・指標について←今ここ
4.実務上のTIPSなど