2.具体的な施策内容
低価格商品のファンマーケティングについて
安いからこそ、「信頼」が一番大事
藤:僕らの商品は調味料なんでやっぱり200円しないんですよ。でも安い商品の利点っていうのがあると思ってます。安い商品は入り口に立つ人の間口が広いですよね。
ただそれを熱狂的にしていくには、安いからこそ「信頼」っていうのが一番大事だと思ってて、信頼があればだんだん愛着とか共感に行くわけなんです。そのことを「おいしいしょうゆ研究部」というファンベース施策で知りました。
宣伝よりも、まずは体験してもらう
藤:ヤマサとして初めてリアルでお客様に集まっていただく「おいしいしょうゆ研究部」という企画をSnapDishユーザーさんにも来ていただいて、何回かに分けてやりました。
その時に気をつけたことは、メーカーの宣伝っぽくしちゃダメだということ。それで、「職人醤油.com」というサイトを運営して地方の醤油蔵を応援している高橋万太郎さんという、日本で最初の醤油ソムリエの方に、司会をやっていただいて内容もお任せしたんですね。
当然ニュートラルな方なので、地方蔵も応援してますし、ヤマサみたいなNB(ナショナルブランド)も応援してますよ、という方でした。初回でびっくりしたのは、A~Fまで6種類のお醤油に、地方蔵の醤油の中にヤマサの醤油が1個だけ入っているというワークショップ。高い豆腐と安い豆腐を用意して、目隠しでユーザーさんに食べてもらって、一番美味しいと思ったものを投票してもらいました。私としては、内心ヤマサが下の方になったらやだなぁという心配もあったんですが、「いえ、大丈夫です!」って高橋さんに言われてやってみたんです。
実際にやってみたらこの通りです。

要は、ヤマサは両方とも2位なんですね。実はヤマサの醤油だけじゃなくてキッコーマンさんの醤油でも同じ結果になったそうで、だからこそNBメーカーっていうのは大きくなったんだと。みんな最初は地方蔵の規模だったんだけど、何にでも合うというのが評価されて大きくなったんですよということです。
これを参加者の皆さんが体験したことで、お取り寄せとかで苦労しなくても、スーパーでヤマサの醤油を買っていれば満足いくんだって、実際に体験していただきました。これ以降、ヤマサのいろんなことをお伝えしても、あまり宣伝っぽくなく、ちゃんと素直に聞いていただけるようになったかなと思います。
その後、この「おいしいしょうゆ研究部」メンバーのうち数名が、今回の「これうまつゆ広め隊」にも入っていただいて、やっぱり心強かったですね。ですから、これがうまくいった最初の事例だと私は思っています。
コロナが落ち着いたら、皆さんと同じ場を共有してもっとやっていきたいですね。
「これ!うま!!つゆ」の開発で大変だったこと
悩んで、悩み抜く作業こそが醍醐味
阿:こういった背景がある中で、今回の商品は松倉さんが担当されたかと思うですが、形にするまでに一番大変だったことをお聞きできますでしょうか。
松:悩んで、悩んで、悩み抜く作業というのが醍醐味でもあり、苦労かもしれないです。例えば、今回だったらネーミングもそのひとつですかね。「これうまつゆ」の場合は、何百の候補をマーケ部で出し合って、それでも良いのが出なくて、藤村からも良いネーミングがいついつまでに出ないようだったら、今回のはペンディングだって会議で言われてました。
阿:それは怖いですね。。。
松:自分がここまでやったからには、自分で考えてやろう!って意気込みはありました。その会議の翌日の朝シャン中に、簡単に美味しいものができるとか、角々しくなく、いやらしくなく、若者風でもないような、万人に理解されるワードって何かなってずっと考えてて、最後CMに出ていただく大泉洋さんのことも考えつつ・・・そこで大泉さんが私の作った商品を食べて「これうま!」って言ってるのが見えて。マーケ部のメンバーにドキドキしながらメールでパッと提案したのはよく覚えてますね。
そしたら藤村からすぐ「Good!!」みたいなメールが来たので、「あぁよかった・・・!」って。そんな話もありました。

「消費者と開発する」ということについて
色々な意見・ヒントから仮説を検証する
阿:消費者と一緒に開発すると言っても、消費者の言うことを取り入れて開発するスタイルと、今お聞きした大変だったポイントってちょっと違うのかなという印象があって、今回の場合、消費者の言うことを取り入れて作った、ということではないですよね?
松:はい、始めの違和感から仮説があって、いろんなご意見、ヒントもいただきながら、仮説に合ってるかどうかを検証しつつ、作り上げたようなイメージです。
阿:消費者の言うことを聞くというよりは、松倉さんだったり御社の方々が開発を進めるための材料であったり、伴走役としてユーザーがいたような印象があります。
松:いろんなご意見はありましたので、確かにそれをすべて聞いちゃうとゴチャゴチャになっちゃうんですけど、その中にも私の考えを入れて、これはダメだ、これはいける!っていう道を踏みながら、ブラッシュアップしていったイメージです。
営業との連携について
阿:実際には商品の企画から営業まで連動していくところがとても難しいと思うんですが、そこを具体的にどうされたんでしょうか?
松:私もそれを教えてもらいたいくらいで・・・(笑)本当に一致団結して進められる方法ってないのかなってずっと思ってます。
ヤマサでは、新商品を開発するときに何回か選抜された営業と打ち合わせをして意見を聞いたりするんですけど、営業がやりたいものとマーケや会社が売りたいものが一致しないことがよくあるので、本当にいろいろ厳しい意見もありますね。
自分も数年前まで営業がだったのもあって、葛藤しているところがあります。
ただ、「意味のない文句」と「意味のある意見」は分けて考えています。当社の人間は「やったろ!」という人間が多いので、そういう意見は大切にしながら、一緒に考えつつ、共感してもらいつつ、うまく提案に乗せると社内の雰囲気も変わってくると思ってます。
ファンづくりと同じような感じで、地道な作業が必要というのは一個人として思ってはいます。
阿:先程のエステーの鹿毛さんのコメントでいくと、火があればその火がなるべく周りに燃え広がっていくように、少しずつやっていく、というイメージですかね?その燃料としてファンの声を使っているのが今回のケースということですね。
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1.ファンづくりの考え方について
2.具体的な施策内容について ←今ここ
3.事例・指標について
4.実務上のTIPSなど